触れる前から、使う前から、 線と影だけで成立してしまう美しさがあります。
新里竜子の代名詞ともいえる「しのぎ」は、装飾でありながら構造そのものでもある仕事。面を彫り、線を刻むことで、器の輪郭はより立体的に浮かび上がり、光を受けては陰へと沈みます。この酒器では、そのしのぎが胴に向かって渦を描くように走り、静かな緊張感と運動性を同時に宿しています。
白に近い柔らかな釉調は、土味を残しつつ、彫りの起伏を過不足なく際立たせるもの。手の中に収めたとき、指先は自然と線をなぞり、目はその流れを追う。酒を注げば、液面の揺らぎが器の内側で反射し、外側の彫りと呼応するような感覚が生まれます。飲むための器でありながら、視覚と触覚を強く喚起する造形です。
日常の酒器という枠に収まりきらず、かといって観賞専用に閉じることもない。その曖昧な位置にとどまることで、美と行為を往復させる存在になっています。使うたびに、線と影の関係が更新される——そんな時間を引き受けてくれる一客です。
φ8cm 高さ7cm
※手仕事による一点もののため、再入荷はございません。
※電子レンジ・食洗機のご使用はお控えください。